初心忘るべからず

朝、開館前には
水槽を拭きます。

きれいな水槽で来館者をお迎えすることは
水族館職員として当然の務めと思いますし
かつ、毎朝生き物を見ることにもなりますし
そうなるとささいな違いにも気が付く確率を高めることが
できる かもしれません。(個人差あり)

その日1日、生き物によろしくお願いしますということと
お客様をお迎えするという気持ちを新たにするような。

初心忘るべからず(忘れるべからず)って、こういうことかしら。

それに
 かわいい
ゴマフアザラシみずきを、よりかわいく見せたいし・・・。

ガラス拭いていると、たいていよってくるんです。

どうしましたみずきさん。

 みずきも
手伝う??

気持ちだけでいいよー。
このきゅーとさで、どれだけ癒されるか・・・。

でも、ガラス掃除はしなきゃいけないので

 ぶしゅー。
(動じず。)

一方ゴクウ。

 ゴクウ~。

 ・・・・・
これは・・・もしや・・・
作業チェックですか?

 あの・・・
いかがでしょうか、ゴクウ殿・・・

 うむ。
よきにはからえ。

そんなこんなで朝ガラス拭いてます。

初心忘るべからず(忘れるべからず)という言葉は、
能役者世阿弥の言葉なんですってね。

一般的にそのままの意味で、初心を忘れるなってことで使われているようですが
(自分はそう思ってた)

じゃあなんで初心忘れちゃいけないんでしょうね。

本当はもっと深い意味があるみたいです。

人生何かを初めて、順調に事が進みだしたり
思い通りにいったり
褒められたりすることが多くなってくると

あれ自分ちょっといい場所にいるかも?
周りは自分をすごい人だと思ってるかも?
って思うようになります。
ここが、世阿弥の「初心」なんだそうです。

そんなとき自分はもうこの道を極めたのだと満足し
それを他に表現したくて
周りへの態度や言葉でそれを表面化させることで
自分は達人なのですよとするのは
なんと情けなく、自分の成長を自分で止めてしまうことに
他ならないと。

褒められたりするのはその瞬間のみであり、
その一瞬が心地よくてそこにとどまろうとすれば
先に進むことはできないと。

その一瞬に留まるな。
この初心からさらに踏み出すことで初めて
ステップアップが見えてくるのだと。

そんなことを、N〇Kの番組で言ってました。

世阿弥は能役者ですから、
自分はすごいんですよと言葉や態度で示すのではなく
自分の舞が表現方法だったわけですよね。

自分よりも技量も何もかも上の人に褒められたら
その瞬間はうれしいけど
その人は実際自分よりももっと上の場所にいて

同じ土俵で勝負したいのであれば
もっともっと上に行かなきゃいけないと
そんな気持ちになるのは
褒められて調子に乗った後にふと襲ってくる危機感の
ようなものなのかもしれません。

その危機感に対して、どう行動するのか・・・
克服するのか、逃げて心地よい場所にすがりつくのか。
自分はどっちかしら。

何だかよくわからなくなってしまいましたが
そんなこんなでガラス拭いてます。

※このサイト内の画像の無断転用・転載を禁じます。

月別で記事をみる