屠体給餌 ユキさん編

以前の回でも少し触れましたが
8月23日、GAOのホッキョクグマに初の
「屠体給餌」(とたいきゅうじ)
を行いました。

こちらの記事の後半をご覧ください
※ホッキョクグマにほぼ丸ごとのイノシシ(3~5㎏程度と小型)
を与えている画です。苦手な方は申し訳ありませんがここで
ご遠慮ください。

「屠」の言葉はあまり日常で目にすることはありませんね。
この漢字ではなく、ひらがなの「と」であらわされることが
多いですが、「と殺」(と殺)の「と」を漢字であらわしたものです。
ちなみに、と殺とは家畜を食用等にするために殺すことを言います。

食用として流通しているお肉は、もともとは生きていた動物。
育てられ、屠殺され、段階を経て、私たちの口に入るわけです。

言い方が残酷だって?そうかもしれませんが
色々省略はされておりますが事実です。

屠体給餌とは、農業被害などを理由に駆除された野生動物
(屠体)を適切な方法で処理し、ほぼ丸ごとの状態で
動物園水族館の飼育動物に与える(給餌)ことです。

駆除された野生動物は約9割がそのまま廃棄されているそうです。
その駆除された動物を肉食の動物にエサとして与える取り組みです。
ここ最近、国内の動物園水族館で行われています。

8月23日、ホッキョクグマ豪太とユキに
害獣として駆除されたイノシシを与えました。
大きさはそれほど大きいものではありません。
頭部と内臓は取り除いて処理されているので、血が流れたりはありませんが
毛皮・脚はついている状態のものをいただきました。

これです。

・・・って写真を載せようとして気づいたんですが
うちのHPは、ブログの1枚目の写真がHPのトップに
出るんですよ。

さすがにそれはどうだろうということで

涼しげなユキさんでーす。というわけで今回はユキさん編!
それでは以下、本題です。

今回いただいたイノシシは

こちらです。
左のが3㎏、右のが5㎏程度。
頭と内臓は取り除かれ、さらに飼育動物に与えるための
適切な処理がされています。

食べるのはユキさんですが
ホッキョクグマのユキさんは我々ヒトが飼育している
飼育動物です。
すなわち私たちが消費する(=いただく)のと
同じかと。

というわけで、ありがたく、いただきます。
(ってユキさん食べるのか未知数でしたけど)

もちろんユキさんがこの状態のエサを見るのは初めてなわけで

多分「?」

とりあえず

くわえて持ち上げてみたものの

すぐ落とす。

まわりをうろうろ。
においも初めてでしょうし、そもそも
毛のついた状態で肉を与えられることなんて、あったのかしら。

離れて近づいては、においをかぐ。

やっぱりたまにくわえて持ち上げて

落とす。

何回か繰り返してました。

ちょっとー。これどうすればいいのー。
(後ろキーパースペース)

いただいてくれたら、と思うのですが・・・。

お、ちょっとユキさんの眼光が鋭いかもしれない。

他の動物の例を聞いたのですが、中にはやはり警戒して
食べ始めるまでにかなりの時間を要した例もあるそうなので

これもしかしてユキさんにとっては食べるものとして映ってないのかな・・・

通常、GAOでホッキョクグマに与えているエサは

こうです。
魚はサバやタラ、冷凍したものを半解凍して与えます。
肉は馬肉、しかし写真のようにこの状態で
「馬」とはわかりませんよね。切りわけられ、もちろん
皮も毛もありません。
ちなみに右のバケツの茶色い粒はホッキョクグマ専用の人工飼料。
ドッグフードならぬホッキョクグマフードですね。

通常、このエサを間食するのには数十分程度です。
豪太なら10分かからないときもあるかもしれませんが。
飼育下での通常の給餌は本来食べることにかける時間に比べて
非常に短いものになっています。

本来、肉食動物が肉を食べる行動は
動物を狩り、仕留め、毛皮を剥いだり骨から肉を削いで
噛みちぎり、胃に入れます。
飼育動物に比べてえらい時間がかかっているわけです。

飼育下ではすることがなかった「食べる」に関わる
行為を引き出すことも、この屠体給餌の狙いです。また、
単調な飼育環境に刺激を与えることも期待されます。

が、先ほど述べたように
これまで見たことも食べたこともないものに対して
どういう反応をするかは未知数ですので・・・

超警戒して、夕方の掃除までこのままっていう可能性も
ゼロではありませんからね・・・

おおっと真上から全く見えなくなったぞ。そして
移動をやめたユキさん。

というわけで観覧側に移動して、見えるところへ移動すると・・・

対峙している・・・

しかしよ~く見ると

かじってる!

ここから少しずつ食べ始めたユキさん。
驚いたのは、毛も皮も食べるのですね。

どんどん肉の部分が見えてきました。

さすがに疲れたか、

小休止・・・

あ、でもなんかいいお顔。
その後は

リラックスしてきたのか、もふけつ食べ。

ユキさんて、魚も3枚おろしで食べるかんじ(半身食べてひっくり返して
もう半身)なんですが、まさかこれもそうやって食べるとは・・・

ユキさん的完食は、大きな骨を残した状態でした。

この日、ユキさんは3㎏のイノシシを3時間かけて食べてくれました。

今回、GAOでは初めての試みで
見ていた来館者の方々の反応も気になっていたところでしたが

「へえ~!!」っていう声がほとんどでした。

ホッキョクグマにイノシシを与えたことについて。
ホッキョクグマにほぼそのままのイノシシをあげてもいいんだということに
ついて。
毛も皮も全部食べることについて。
こういう取り組みが日本の動物園水族館で行われていることについて。
害獣として駆除された動物のほとんどが廃棄されていることについて。
・・・等々です。

長くなりましたが、皆さんはどんな感想を持たれたでしょうか。
コメントに寄せていただけたら幸いです。

ユキさん編はここまで!
次回は豪太編をお送りします。

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