保護したキタオットセイ、オットちゃんのこと
お知らせでもお伝えしましたが、6月8日に保護されたキタオットセイが、7月6日朝亡くなりました。
保護されて約1ヶ月が経った日の朝でした。
6月8日に男鹿で保護された、キタオットセイ。
テトラポットの上に、
ぽつんと横たわっていた
キタオットセイ。
発見時痩せが目立ち、かなり衰弱しており、GAOで保護することになりました。
保護された当初は体を動かすこともわずかでした。
点滴の処置や、
少しずつ自分で自分の体を
支える姿勢をとることもできるようになりました。
少しでも食べてほしいと、無理矢理魚を口に押し込んでいましたが、
そのうちに
「こはまだ!」
「いや、オットちゃんだ!」
「見つけたひとは、ハマちゃんっていってたよ」(見つかったところが小浜)
「でもハマちゃんて、男っぽくない?(おそらく映画の影響)」
「オットセイのオットちゃんですけど、おっとりのオットちゃんともとれますよね~」
もちろん、最終的には海に還すことが目標でした。
そのため、名前ははっきりつけなくていいのではないか・・・と、最初はそうでしたが、
みんな自然に「オットちゃん」と呼んでいました。
海から来た、野生動物です。
もちろん還れるようになったら、海に還ってもらうこと。
これが私達の唯一の目標でした。
保護当日から、血液の検査から腎臓の機能が弱っていることがわかっていました。
餌を食べるようになり、点滴や注射をする際に抑えるが難しくなっていき、しかしそれは
力が出てくるようになったのだと喜びました。次第に元気になって、海に還せる季節がきたら
また海を泳いでほしいと願っていました。
治療は毎日続けられましたが、腎臓の機能は低下していったようです。
尿が体の中で作られなくなったのです。
腎不全の末期を迎え、「いつ旅立っても・・・」という状態になりました。
心の中で元気になってほしいと願いながらも、覚悟もありました。
そして7月6日、天国へ旅立ちました。
オットちゃんが保護され、GAOに来て約一ヶ月でした。
野生動物の保護・治療ということは、GAOでは初めてのことでした。
この一ヶ月、いろいろなことを考えました。
果たして、たまたま人の生活している場所に弱ってたどり着いた野生動物を見つけたとき、どうすれば
正しいのか。なにが正解なのか。
もとは野生動物です。野生の中の命です。野生では、自然の中でなくなる命も多々あります。というか、
それが当たり前なのです。
今の私の言葉ではうまく表せませんが、複雑な思いもありました。
しかし、私達の願いはとにかく
「元気になったら、再び海に還ってほしい」
海にかえすためには、人になれてはいけない、そのために、餌も生きた魚を捕まえてきて、オットちゃんが泳いで
自分で餌を捕まえて、食べれるように・・・等、オットちゃんが海に帰るまでの計画を話したりもしました。
約一ヶ月という期間はとても短く、とても貴重な期間でした。
一ヶ月以上、オットちゃんがそこにいたような気がします。
私達は、本当にたくさんのことを学ばせてもらいました。
今後、前に進んでいくために、オットちゃんのことは忘れることができません。
忘れるわけがありません。
天国へ旅立ったオットちゃんへ、本当にありがとう。
オットちゃんだけではありません。
これまで、天国に旅立った生物達は必ず、とてつもなく偉大で、
とてつもなく大切なことを残してくれています。
その一つ一つを決して無駄にすることなく、前に進んでいくことが、旅立っていった命と、
今ある命と、これから生まれてくる新しい命への感謝と私達の義務だと思っています。
これからも、生物達がいっそう輝いてくれるようにスタッフ一同努力していきます。